会社のルールを定めた就業規則なくしては、労務管理はできません。

 

就業規則作成及び変更の注意点

 

 就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件、そして労働者が守るべきルール、及び違反に対する制裁などを定めた規則であり、会社が事業の運営を円滑に行うための職場規律を定めた規則類を言います。

「常時10人以上の労働者を使用する」事業所は、就業規則を作成する義務があり、就業規則を作成または変更した場合には、労働者の意見書を添付し、労働基準監督署に届け出なければなりません。

「常時10人以上とは」
時として10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用するという意味と解されています。(労基法コンメンタール)

注意
「週2日勤務でも継続的に労働している者は労働者数に入る」(昭和63.3.1基発第150号)とされています。

 

 

就業規則の役割

使用者と労働者との間で何かトラブルが生じた場合、まず使用者及び労働者から「就業規則にはどう定めているか」という声があがります。もちろん、法律(労働法)との関係も問題になります。

なにもトラブルが発生しなければ、就業規則の存在すら意識していないのが実態ではないでしょうか。

欠勤の多い労働者をどう扱うのか、残業手当の扱いをどうするか、不況で賞与が出せないなどの問題が生じた場合に、改めて就業規則が重要視されるのです。

会社は複数の人間が運営する組織です。労働者一人ひとりが勝手な行動をとれば、当然その組織自体が壊れてしまいます。

組織を発展させるためには、労働者の力を効率的に発揮させなければなりません。そのためにも守るべき一定のルールが必要になるのです。

トラブルを未然に防ぎ、そして会社を発展させるためには、ルール及び労働条件を定型的に定める必要が出てくるわけです。

そのルールや労働条件を定めたものが「就業規則」なのです。 

就業規則の機能と効果

 

ポイント1

労働契約法の第12条には、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について、無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による」と規定されており、就業規則は会社においては労働条件の最低基準を定めたものとなります。

 

ポイント2

原則として労働条件は、使用者と労働者の合意に基づいて決められます。
しかしながら、労働者一人ひとりごとにその都度労働条件を設定していては、合理的とはいえません。
そこで、就業規則に画一的に労働条件を定め、採用時に就業規則の内容を説明し双方で合意することで就業規則の内容を労働契約の内容とすることで合理化が図れることになります。

 

ポイント3

労働契約法の第7条では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。」と規定されており、採用時に具体的な労働条件について合意してない場合でも、労働契約の締結の際に就業規則を周知していればその内容が、双方でその就業規則の内容と異なる労働条件に合意していない限り、労働契約の内容になります。

 

ポイント4

就業規則の変更により使用者が一方的に労働条件を変更することが可能です。
ただし、不利益変更の場合はその理由に合理性が求められることになりますので注意が必要です。
労働契約法第10条では、
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その
他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、

労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。」 と規定されているので注意が必要です。


最新の法改正に対応した就業規則を策定することで、労務リスクの軽減を図り、健全な事業運営を図るためのお手伝いをさせていただきます。